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3月5日(水) ナツミカン(ナツダイダイ、ナツカン)

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隣町の農家の庭に植えられているナツミカンです。ナツミカンは過去二度、ここに登場し、この1月にも取り上げたばかりです。それがなぜ、また?
じつは、1月に撮った木の下にはいくつか実が落ちていて、いたずらで突っ込んだ自分の指を舐めたら、そんなに酸っぱくも苦くもなかったのです。以来、店先に並んだ「商品」ではなく、木から直取りした実を試食したいと思い詰めていました。
というのは、ナツミカンは夏に食べる蜜柑だと思っていたからなのです。調べると、さすがに「真夏」という説明はなくても、食べごろはどうやら「初夏」であり、収穫は早くても4月下旬ころからで、5月が旬のように書かれています。さらに、商品だと「貯蔵して味を落ち着かせる」みたいなこともするらしく、これも「食べごろ」をわからなくさせます。

いったい、ナツミカンって夏に食べるもの? 冬にも食べられるもの? 今回はこの素朴な疑問の解決編です。
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さて、冒頭紹介したお宅は、庭先でとれたて野菜の直売をしています。そこで、ちょいと買い物したついでに、ご主人に「あのナツミカン、分けてもらえない?」とおねだりしてみました。「いいよ。自分で採って持っていきな」とうれしい返事です。いそいそと木の下に行き、手近な一つをクルッとひねると、わりと簡単にもげました。
葉の陰になっていた部分(写真左側)は色づきが悪く(黄色)、いかにも「そのまんま」の見かけです。ご主人に聞くと、いまごろから食べられるそうで、木の下には完熟の実がかなりの数、落ちていました。
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試食の結果です。「夏」みかんは「冬」みかんでした。酸味が強いのはナツミカンとして当たり前のレベルだし、心配した苦みはまったくありません。酸っぱいもの嫌いの助手1号にはパスされたものの、助手2号はペロリと半分食べました。

さて、この顛末をどうまとめたらいいのでしょう。「初夏」を6月と解釈すると、指を舐めて平気だった1月末との間は丸々4カ月です。今回の試食とでも3カ月あります。なんでも気が早くなった世のなかのせい…とするのは少し無理がありすぎます。
一つのヒントは、埼玉はナツミカンの栽培には寒すぎるらしいことです。暖地を好むので、寒冷地では冬に実が落ちるそうで、これを拡大解釈すると、「実が落ちる=熟成が早い」と考えられます。
関東では夏蜜柑と呼ばずに春蜜柑と呼ぼう…などとバカを言おうと思ったら、なんと名前にも問題がありました。ナツミカンの本名はナツダイダイでした。(詳しくは「萩夏みかんセンター」HPを参照(注3)、ただし標準和名はナツミカン)
さらなる問題も発生していて、本来のナツミカンはずいぶんシェアを下げ、いまはアマナツ(甘夏みかん、カワノナツダイダイ・注2)の方がよく栽培されているらしいのです。二つの見かけはかなり似ていて、わずかに甘夏の色が濃く(オレンジ)、表面がやや滑らかということで、いままでナツミカンと思っていた木も怪しくなってきます。
ということで、1月の記事ではうかつにも自分のことを誉めたりしていたのをすべて取り下げです。やれやれ、試食の味とは違って、やけに苦い結論になりました。

<補注1> 実と花のツーショットを収録しました。(2018年5月11日
<補注2> 甘夏(カワノナツダイダイ)かなと思われる木が実を残したまま開花していました。(2023年5月1日
<補注3> 萩夏みかんセンターは改組されたようで、参考にしたサイトも消失してしまいました。(2025年春)

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