番外編 : 田子山富士
ブルもクレーンもない時代、工事はさぞや難儀だったことでしょう。さまざまな神社名を刻んだ大きな石の連なりには、異次元にいざなう荘厳さを感じます。
4月29日(日) サルトリイバラ(サンキライ)
ジグザクに走る枝の角ごとに、若葉と一緒に花が開いています。球状に集合した花の塊の直径は3㎝ほどです。
その小さな花のなかに見える白い点々は雄シベ(葯)です。雌雄異株で、残念ながらここにはこれ一本だけでした。早く雌花も見たい(注1)ものです。
<補注1> 雌花の収録は3年後に実現しました。( 2010年4月14日)
<補注2> この記事のタイトルはサンキライをメインにしていました。しかし、本来のサンキライはケナシサルトリイバラであることがわかったので、改題(記事は当初のまま)しました。(2012年1月10日)
2006年のきょう<ムサシアブミ> 2005年のきょう<モチツツジ> 2004年のきょう<イトザクラ(シダレザクラ)>
4月28日(土) カントウタンポポ
西洋タンポポではない在来の蒲公英には、土地の名前を冠したいくつかの種類があるにしても、埼玉・志木の住人としてはまずこれを取り上げねばなりません。
写真の三本線の真んなか位置で外側の総苞片が反り返る西洋に対し、在来のものは軽く開くだけが特徴です。さらに在来のなかでの見分けは中央の線の位置で行い、「関東」はこの線が真んなかよりも下にくるのだそうです。
2006年のきょう<リュウキンカ> 2005年のきょう<モミジバフウ> 2004年のきょう<コデマリ&オオデマリ>
4月27日(金) シロバナアケビ
あの淡い紫だからこそアケビの花なのに、わざわざこういう園芸品種を作り出してしまうのだから、ヒマというか執念というか、世のなか平和がなによりです。
写真の株は雄シベが紫(注)なのに、よそのサイトを覗いたら、そこまで白いものがありました。時期のズレかもしれないし、秋の実も楽しみ(白かったりして・笑)だし、今後も観察したいと思います。
<補注> 「雄シベが紫」としたのは観察不足で、これは花粉放出後に枯れて黒くなっているだけだったようです。葯が割れる前の姿を確認しました。(2009年4月8日)
2006年のきょう<カブ> 2005年のきょう<ゲンゲ(レンゲソウ)> 2004年のきょう<ハナズオウ>
4月25日(水) オオバベニガシワ(雌花)
そのときはタコのような雄花だけの掲載だったので、今回は雌花をとらえました。ハナノキやカツラのそれと似て、ピラピラだけで愛想のない姿です。
同じ木に雌花も雄花も両方つきはしても、
<補注> 枝によって雌花と雄花が分かれ「やすい」のは事実でも、一枝に雌雄が混在するケースが皆無ではないことがわかりました。(2017年4月15日)
4月24日(火) ヒメウズ
4月23日(月) ウラシマソウ
番外編 : 多摩森林科学園
ここの売りは250種・1,700本の桜です。予想外の起伏(ほぼ軽登山)と人出に驚いたものの、春の野山が満喫できた一日でした。写真は、ひと目で惚れてしまった更紗という桜(サトザクラ・園芸品種)です。
4月21日(土) オーニソガラム
そんなオーニソガラムの花畑に臆面もなくしゃがみ込んでみると、今年は新たな発見がありました。雄シベの花糸が、通常の線形ではなく平たい弁状です。
ハタザクラの旗は雄シベが変化したものなのに対し、オーニソガラムの雄シベはそんな変形ではなく、これが元々の姿のようです。黄金に飾られた白い冠に純白のローブをまとったお姫様みたいです。
<補注1> 去年は5月6日にオーニソガラムを載せました。今年はそれより半月ほど早い開花です。
<補注2> これらのオーニソガラムの正確な名前は、オーニソガラム・ウンベラツム(Ornithogalum umbellatum、標準和名オオアマナ)です。
<補注3> オーニソガラムはケープバルブの一員と知り、あわてて芽出しを撮影してみました。(2022年2月5日)
4月20日(金) ヒメフウロ
葉の形はヨモギを思わせても、質は薄くて毛はなく、縁に赤みを帯びます。花には雄性期(真んなかの花)と雌性期があります。
その花は、ゲンノショウコなどと似ていて、いかにもフウロソウ科らしく、ヒメフウロという名がうなずけます。しかし、紛らわしいのは同科のエロディウムもヒメフウロと呼ばれることです。こういう混乱した名づけにはときどき泣かされます。
2006年のきょう<タチイヌノフグリ> 2005年のきょう<カロライナジャスミン> 2004年のきょう<ナノハナ>
4月19日(木) マツバウンラン
小さな花に似合わぬ太い茎がいかにも丈夫そうで、まさにビヨーンという感じです。茎だけ50~60㎝ものびるので、よく目立ちます。
松葉の名前の元になった葉(写真背景部)は、本物ほど細くも長くもないとは言え、マツバギクのそれよりは誇大表示ではありません。花壇の手入れをする人たちも簡単には抜きにくいらしく、かわいらしく風に揺れています。
<補注1> 名前の後半・「ウンラン」には8年後に会えました。(2015年9月5日)
<補注2> この草の強さを再確認し、種をナガミヒナゲシと比べてみました。
2006年のきょう<オニタビラコ> 2005年のきょう<ハナミズキ(アメリカヤマボウシ)> 2004年のきょう<ハウチワカエデ>
4月17日(火) ネギ
根深ネギの白いところを食べる文化は箱根から東だそうで、天下の険がネギにも関所になっていたとは意外な思いがします。
ネギに限らず、東西の食文化の違いというのは面白くて、土地土地でつい確かめてしまいます。その境界は、納豆とかうどんつゆなど食べ物それぞれで違い、一つの線など引けません。しかし、ネギのそれはどうやら最も東に位置するようです。
<補注1> 葱坊主を再掲しました。(2020年4月11日)
<補注2> 志木の近辺で栽培されている葱はいったいなんという名前の品種なのか、気になり始めました。(2024年2月26日)
4月16日(月) カーネーション
母の日の切花ばかりが印象に強くて、カーネーションに根があることをすっかり忘れていました。魚の絵を描けと言われて切り身を描く子供と一緒です。
こんな間抜けな息子を持った母親が不憫であっても、いまさら花束で慰めても仕方がありません。お仕着せの記念日は気持ち悪くていけないので、来月の第二日曜がくる前に、なにか贈っておくとしましょう。
2006年のきょう<ヒメツルニチニチソウ(斑入り)> 2005年のきょう<ハタザクラ> 2004年のきょう<ハタザクラ>
番外編 : 幸運に感謝
この3年、さしたる問題もなく毎日由無しごとを綴ってこられたのは幸運の一言です。先のことはわからなくても、どこまでできるかを楽しむつもりです。
4月15日(日) ラショウモンカズラ
そう言われればなんとなく腕に見えます。どうやら肘から切られたらしく、開いて痛々しいのが肘側、萼の側が手指なのでしょう。
ところでその綱くん、やたら強かったようで、鬼童(同)丸や酒呑童子もやっつけました。綱くんが平安の英雄ならば、平成のヒーローはDice-Kあたりですか。
<補注1> 3月の芽吹きを見つけました。(2014年3月18日)
<補注2> 2月初めでも若葉の様子は同じようでした。(2016年2月2日)
4月14日(土) ムレスズメ
あと1週間もして花つきが良くなると、まさしく名前どおりの姿になります。また、枯れる前の花弁は赤みを帯びて、賑やかさをさらに増します。
…と書いてきて自分で宿題を見つけました。これはマメ科なのでたぶん実をつけるはずなのに、いつも花のあとを見ていませんでした。今年はどうか忘れませんように。
<補注> 豆の姿の収録は6年後でした。(2013年5月13日)
4月13日(金) ムラサキケマン
セリに似た感じの葉と筋張った茎は春早くから元気よく茂ります。人間と同じで、足腰の丈夫さが強さにつながるようです。
ケマンというのは団扇型の仏具で、この草にはまったく関係ありません。同じケシ科のケマンソウから名前を借りたそう(注)で、そんな冷遇にもめげず元気なものです。
<補注> この説の出典は『野草の名前』(山渓)でした。しかし同書には「同じ属なので」と間違った解説もあり、内容精度は怪しく思えます。
現在の華鬘は金属や革製の団扇型であっても、そもそもは花を糸で綴った装身具だったようで、このムラサキケマンの花序は素朴にそんな花飾りを思わせることからのネーミングと思えます。(2022年4月)
4月12日(木) プリムラ・マラコイデス
やたら舌を噛みそうな名前ではあっても、オトメザクラとかケショウザクラとかヒメザクラ(ヒメサクラソウ)などという和名・別名にはほとんど会うことがありません。ややこしい学名そのままで、しっかり園芸店の人気者です。
夏の暑さには弱くても、春は早いうちから豪華に花を咲かせます。一株でも十分美しいのに、寄せ植えするケースが多いのは愉快です。この花の海が、たゆたうような春の幸せを感じさせるからではないでしょうか。
<補注> メラコ(プリムラ・メラコ、プリムラ・メラコイデス)という呼び方もあることを知りました。(2015年1月16日)
2006年のきょう<オオベニウチワ(アンスリウム・アンドレアナム)> 2005年のきょう<ハナカイドウ>
4月11日(水) イカリソウ
「怒髪天を衝く」姿に見えるので「怒り草」ではどうかと思ったのに、そんなことを書いている図鑑は皆無です。はた衛門珍説は簡単に取り下げ、ここはセオリーどおり「船の碇(いかり)に見立てた」としましょう。
ただし、碇とは言っても洋式大型船のものをイメージしては碇違いになります。この名は平安初期から文献にあるそうですから、和船のあのシンプルな碇を思い浮かべるのが正解となります。
<このあと収録したイカリソウいろいろ・掲載順> ☆ ピンクのトキワイカリソウ ☆ 色の強いイカリソウ ☆ 白のトキワイカリソウ ☆ 真冬のトキワイカリソウ ☆ バイカイカリソウ ☆ 寒期のイカリソウ ☆ ホザキノイカリソウ ☆ モモイロバイカイカリソウ ☆ キバナイカリソウ ☆ エピメディウム・ペラルデリアヌム ☆ ヒメイカリソウ
4月9日(月) セイヨウジュウニヒトエ(アジュガ・レプタンス)
似たような姿で花色が白いものは在来のジュウニヒトエで、それと区別するため、こちらの和名には頭に「西洋」がつきます。ただ、ふつうは学名のままアジュガ・レプタンスとか、もっと単純にアジュガと呼ぶことが多いようです。
先日載せたキランソウとはシソ科キランソウ属同士です。ふつうのキランソウが地面を這うのに対し、アジュガは個々の茎が林立状態で殖えます。セイヨウキランソウという別名も持っていて、一面が紫になった景色は見事です。
2006年のきょう<チョウセンレンギョウ> 2005年のきょう<ドウダンツツジ>
4月8日(日) バイモ
4月6日(金) トウダイグサ
トウダイは、漢字だと「灯台」と当てます。ただ、字は同じでも岬の灯台のことではなくて、昔の室内照明器具のことです。
高い脚の上にお皿をのせ、それに油を注ぎます。すると夜になって大きな猫が現れ、お皿の油をペローリ…あ、脱線です。たしかにこれ、あの道具に似ています。
<補注> トウダイグサを再掲しました。(2016年5月14日)
4月5日(木) キランソウ
別名が「地獄の釜の蓋」で、これはまたずいぶん恐ろしげな呼び方です。
強壮そのものの風貌にたがわず、全草を干して薬草にします。それで、死にそうな人も助かるからと別名を説明したりはしても、その辺の真偽は不明のようです。あまり詮索せず、面白さだけ楽しんだ方がよさそうです。
<補注> 秋になって、「地獄の釜の蓋」を実感しました。(2008年10月24日)
2006年のきょう<ミケリア・マウダイエ> 2005年のきょう<レンギョウ>
4月4日(水) アザレア
しかし、その名は1700年代にリンネがつけたものだそうで、江戸時代中葉のことですから驚いてしまいます。
分類学の父であるリンネは、ツツジの仲間のうち雄シベが5本のものを Azalea、10本のものを Rhododendronとしたのに、いまではすべてが後者に包括されました。学問上は消えた名がこれだけ愛されるとは、リンネもきっと本望でしょう。
4月3日(火) スノーフレーク
可憐な姿に似合わず丈夫で、空き地に誰かが植えたであろう球根が毎年確実に殖えています。おかげで、近所に何カ所かスノーフレーク名所ができつつあります。
同じヒガンバナ科の仲間にスノードロップがあって、姿は似ているわ名前は紛らわしいわでときどき困ります。
<補注1> 開花直後は花が横向きになりやすいと知りました。(2010年3月24日)
<補注2> アキザキスノーフレーク(属違い)を育ててみました。(2023年9月11日)
4月2日(月) ヤマエンゴサク
昔はこの距を引っ掛け合って遊んだそうです。いまの子たちにピコピコをやめてこの遊びを勧めたいと思っても、エンゴサクはいまや貴重品です。子供を責めている場合ではなく、こんな環境にしてしまった大人の非を問われそうです。
<タイトル訂正> 掲載当初はこれをジロボウエンゴサクとしていました。しかし、苞葉に切れ込みがある(↑赤丸部分)ところからヤマエンゴサクに訂正します。
また、文中に「距を引っ掛け合って遊んだ」とあるのはジロボウエンゴサクの名前由来についてよく使われる説明であり、ヤマエンゴサクでもそういう遊びをしたものかは未検証です。(2007年4月10日)
4月1日(日) カテンソウ
図鑑で見ると蕾の色が赤紫のものばかりで、これはそんな色みがないのが少し気がかりです。似たものはないということなので、花点草としておきます。
ティアラのように見えるのは雄花(というか雄シベ)です。雄花の房はこのように茎の先に突き出るのに対し、雌花には柄がなく、下の葉の付け根(注)で目立ちません。次の課題は雌雄の花を一緒に写し込むことです。
<補注> 雌花の着き方がようやくわかりました。ついでに「ふつう」タイプの赤い雄花も見ることができました。(2015年4月20日)