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9月30日(土) ミドリマイ

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去年、黒米として取り上げた稲(同じ田)が花をつけていました。ふつうの稲よりも、古代米は生育がかなり遅いのだそうです。
さて、この古代米、去年は「赤と黒がある」としたのに、よく調べると緑もあり、この田の稲はどうやらそっちではないかと思い始めました。黒米は籾の色がもう少し灰色っぽいかもしれません。
さらに、クロマイではなくクロゴメと呼ぶのだという話もあります。緑の方もミドリゴメとするのか(注)、去年の記事を訂正すべきか、あれこれ迷います。籾の色がわずかに違って見えるので、暫定で去年のものを黒、今年は緑としておきます。

<補注> このごろは緑米についての情報も増え、この稲がそうだったかはともかく、読み方はミドリマイで問題ないとわかりました。(2020年秋)

2005年のきょうコスモス> 2004年のきょうオオオナモミ

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番外編 : 鄙願(ひがん)とサンカヨウ

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新潟は分水の酒屋(蔵元ではなく小売店)から郵便が届きました。いい酒を売る店は、DMまでいい仕事をすることにあらためて感心です。
切手にあるサンカヨウ、初めて知る植物です。標高のある山に咲くらしいので、今後、目にする確率は低くても、いっとき楽しませていただきました。
この酒屋が扱う(特注)銘柄は「鄙願」といって、それはそれはゆかしい酒です。深山に咲く純白の花に思いを懸けながら、悠然といただきたいものです。

<補注1> 目にすることはないと思っていたサンカヨウを、花後ではあったものの写すことができました。(2015年6月21日
<補注2> さらに花を見ることができました。(2018年5月4日

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9月29日(金) ハエドクソウ

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蠅(ハエ)をめっきり見なくなった生活というものが我々にとって本当にいいものなのかどうか、ハエドクソウ(注)を眺めながら考えてしまいました。
昭和のころの台所に吊されていた蠅取紙はこの草の根を煎じて作ったそうです。もっとも、いまの若い人に蠅取紙と言ったところで首を傾げられるだけでしょう。
そんな訳で、怖い名前だけがこの草に残されました。実がひっつき虫になるので、この先は厄介者扱いされます。ただ、花は5㎜ほどのかわいい唇型です。

<補注> ハエドクソウにはナガバハエドクソウという別種があることを知ってみると、上に掲げた写真の花は「ナガバ」に見えてきました。ただし、写真が甘すぎるし、ほかに見分けの証拠を押さえてもいなかったので、この記事は広義のハエドクソウを取り上げたものとしておきます。

2005年のきょうヒガンバナ> 2004年のきょうハゼラン

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9月28日(木) ヤマジノホトトギス

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先日の番外編で取り上げたホトトギスは台湾原産で、あちこちの庭で一番見かけます。それに比べると、このヤマジノホトトギスはかなり少数派と言えます。
ただ、山路というほど険しい場所でなくとも繁殖します。ほかのホトトギスとの区分のための記号と言い切る図鑑もあるほどです。
紛らわしい名前にヤマホトトギスがあって、あちらは花弁が反り返ります。逆にホトトギスは平開しません。その中間で水平に開くのがヤマジ、と区別できるようです。

<補注> 色黒タイプのヤマジノホトトギスを見ました。(2006年10月7日

2005年のきょうケイトウ> 2004年のきょうセイタカアワダチソウ

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9月27日(水) ヒデリコ

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ヒデリコという風変わりな響きの名前を知った途端に、いままでは「雑草」だったものがかわいらしく見えてくるから不思議です。
田んぼの周りにたくさんあり過ぎ、いままで気にとめないでいました。今回、そろそろ名前を知らなくてはと思い、カヤツリグサの仲間の特徴である茎(断面が三角に尖る)を頼りに調べたら、すぐに正体が判明しました。
乾燥に強いからこう呼ばれるようになったそうで、たしかに省エネ型の風貌です。そんな素っ気ない姿も美しく見え出すのが名前の効能というものでしょう。

<補注> 枯れたあとも、ヒデリコは田んぼを飾っていました。(2015年12月20日

2005年のきょうホオノキ> 2004年のきょうペンタス

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9月26日(火) ヌスビトハギ

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快哉を叫ぶ、などという大仰な言葉を持ち出してしまうほどうれしい一枚です。二年越しの念願だったヌスビトハギのパーフェクトショットが撮れました。
まずはこの萩の最大の特徴であるサングラス型の実です。そして萩というにはかなり寂しい、1㎝に満たない花が咲いています。
そして、駄目押しになる三出複葉をヤヤボケながらも入れ込むことができました。なかなかこちらの注文どおりにはならない自然からの、やや遅めのボーナスでした。

<補注> 豆果のできる過程を見つめてみました。(2018年9月1日

2005年のきょうアレチヌスビトハギ> 2004年のきょうコブシ

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9月25日(月) ハナセンナ(アンデスの乙女)

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写真だときのうのカラスノゴマと紛らわしく見えて困ります。現物を見たなら、木(ハナセンナ)と草なので混乱はしないのに…。
元側と先側の葉が逆向きという、ちょっと変わった偶数羽状複葉です。ただ、それよりも愉快なのは名前でしょう。なんと、「アンデスの乙女」!
これは呼べません。無理です。「青年の木(ユッカ・エレファンティペス)」よりも気恥ずかしいです。なのでタイトルはハナセンナをメイン(注3)にしました。このセンナという音を不思議に思っていたら、ラテン語源でした。

<補注1> かなり似た木にモクセンナがあります。(2012年1月31日
<補注2> まだ若いこの木と違い、ハナセンナが日本に導入された昭和初期の植栽ではないかと思われる立派な木を見つけました。(2015年10月24日
<補注3> この木の標準和名はハナセンナであり、「アンデスの乙女」はたぶん流通名だと思うので、無理にそう呼ぶ必要はなさそうです。(2020年秋)

2005年のきょうシロミノコムラサキ> 2004年のきょうフウセントウワタ

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番外編 : アールデコランプシリーズ(2)

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タイトルを「シリーズ(2)」としてみたものの、その1はいまを遡ることなんと18カ月、しかもシリーズになるとは本人も知らず、さらにこの先「シリーズ(3)」があるかどうか(注)はまったく運次第というイイ加減な企画です。
しかし、写した本人はいたく感動したのです。まるで宮殿の一室に置かれた優雅な硝子細工のランプを見るようです。
こういうのが部屋にあると辟易する貧乏性ではあっても、自然のなかでほんの一瞬の偶然に出会えた幸せは格別です。おっと、被写体はタイワンホトトギスです。

<補注> かなり無理のある「シリーズ(3)」を載せました。(2006年10月2日

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9月24日(日) カラスノゴマ

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スズメと並んで、カラスは植物の名前によく使われます。身近なところではカラスウリカラスムギ、あるいはカラスノエンドウ(ヤハズエンドウ)などがあります。
今年はそれらよりもちょいと見つけにくいカラスビシャクに会えて喜んでいたら、今度はもっと稀少かと思っていたカラスノゴマにまで遭遇できました。
ただし、時期がまだ早すぎてゴマは気配さえありません。ゴマの代わりにアリさんが黒々したお尻を見せてはいても、稔りの時期はまだ少し先のようです。

<補注> 長い莢がついたあと、ゴマは秋遅くにできあがりました。(2012年11月23日

2005年のきょうアスパラガス> 2004年のきょうシュウカイドウ

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番外編 : タカサブロウ

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先日、タカサブロウを載せたあとで、あれには墨斗草(ぼくとそう)という別名があることを教えていただきました。貧しい高三郎クンが、あの草の茎で文字を書いて勉強したというのです。
写真で郎の字が半端なのは、字を思い出せなくなった訳ではないので念のため。茎の汁気が尽きて、ここで全然書けなくなりました。
かなりゴシゴシこすり付けるようにしてこの程度です。もう少しスイスイ書けないと、これでは高三郎クンの勉強はあまり捗らなかったろうと同情します。

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9月23日(土) コナギ

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休耕中の田面がこの草で覆われていました。スペードを細くした形の、ホテイアオイに似た艶をもつ葉がきれいです。
葉だけでもきれいな眺めだったのに、涼しくなったら花がつきました。葉よりも低い位置で控えめではありながら、青紫の花がこうやって二つ三つと固まって咲くので、なかなか目立ちます。
ミズアオイを古くはナギと呼び、その小型だからコナギです。よく似た革質の葉を持つナギという木もあって、ナギは凪に通じて平滑という意味があるようです。

2005年のきょうヤブツルアズキ> 2004年のきょうナナカマド

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9月22日(金) チヂミザサ

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去年から追いかけていたチヂミザサの花をようやく撮ることができました。
花のないとき、特に若葉のころは、これとコブナグサが見分けにくくて悩みます。そこで、決定的に違う花をつけた姿を見比べておけば、少しは「違いのわかる男」になれるだろうという魂胆でした。
たしかに、同じイネ科なのにこうも違うかという姿で、こちらの方が稲の花により近い感じです。花の違いはよくわかったので、来年の見分けテストに期待です。

2005年のきょうオトコヨウゾメ> 2004年のきょうミヤギノハギ(ナツハギ)

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9月21日(木) ヤマハギ

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ヤマハギという名前からすると、わりと質素系の姿を連想するのがふつうの感覚だと思うのです。ところが、長い柄の先に賑やかな花房が目立つ都会派の姿ですから、頭がなじむのに時間がかかります。
葉の形(ほぼ小判型)が似ている萩にマルバハギがあるものの、あちらはこれほど花が飛び出さず、葉の脇にとどまります。
枝も、ヤマハギはその花柄と同じようにのびのびしています。鬱陶しいほどに枝垂れるミヤギノハギと違い、いかにも自然な姿がヤマハギの持ち味です。

<補注1> 嵌め込み画像はヤマハギの翼弁と竜骨弁の長さを見ています。
ミヤギノハギの場合、翼弁よりも竜骨弁が明らかに長いのに対し、ヤマハギはそれがほぼ同寸です。
<補注2> 夏の姿の再掲はこちら、黄葉と実の姿はこちら、冬になっての二番咲きの様子はこちらです。

2005年のきょうオトコエシ> 2004年のきょうナツメ

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9月20日(水) アシタバ

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もう四半世紀もの昔、伊豆大島に行ったとき、アシタバを初めて知りました。もっともそれは野山の植物としてではなく、朝の味噌汁の具材としての出会いでした。
民宿のバアちゃん、庭先から摘んできて曰く、今朝こうして摘んでもあしたにはまたたくさん繁ってる、だからアシタバ…ふむふむ。
帰りに港で苗を買ったはずなのに、ウチで味噌汁に入れた記憶がありません。いまは近所の畑でこうして花をつけているのに、昔はうまく育たなかったようです。

<補注> 真冬にも若葉は元気です。(2014年1月15日

2005年のきょうシロミノコムラサキ> 2004年のきょうフジバカマ

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9月19日(火) ミズキンバイ

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きのう載せたタカサブロウは田んぼ脇の湿地が好きなのに比べ、このミズキンバイはその名に「水」を冠するとおり、もう少しきれいなせせらぎのなかに見つけました。
遠くからも輝いて見える黄色の花は、「金梅」という形容がピッタリです。水+金梅、まさに見たままの素直な名付けです。
梅にたとえるとおり、5弁の花びらはかなりはかなげです。よくよく見ようと茎に触るだけでヒラヒラと散られてしまい、完全な花を写し込むのに苦労しました。

<補注> ミズキンバイの意外に逞しい匍匐枝に注目してみました。(2015年9月1日

2005年のきょうシロバナマンジュシャゲ> 2004年のきょうツリフネソウ

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9月18日(月) タカサブロウ

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田んぼの用水脇に、ちょいと薄汚れっぽい花が目立つようになりました。花の形だけ見るとヒメジョオンがしくじったみたいでも、色合いや花つきがそれよりずっと渋くて、ついでに名前まで渋く、タカサブロウです。
見かけの悪さを名前の愉快さでカバーしようという魂胆でしょうか。
タダレメソウからの変化だと言われても、かなりの無理を感じます。乾燥させた全草を煎じて患部に塗ると効き目があるというので、タダレメの名には由緒があるようです。それがなぜ…、の不思議を秘めた渋い草です。

<補注> 別名である墨斗草の意味を証明してみました。(2006年9月24日

2005年のきょうヒガンバナ> 2004年のきょうシキミ

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9月17日(日) コウヤマキ

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これがあなたのトレードマークです、と言われたって、ご本人が物心ついたとき、「ぼくはヒマワリがいいなァ」とか思ったらどうするんでしょう。
さらに、こんな大きな木をデザインすると言っても、お皿に描いたら入りきらないでしょーョ…などと、皇室ご慶事の報道をテレビで見ながら、不遜にもクダを巻くオジサンが約一名おりました。
とはいうものの、いい木です。30~40mにまでなるというのに、巨木にありがちな複雑怪奇さがなく、凛々しい姿です。この木も、上方は霞んでいました。

<補注> 高野槙よりお印に好適と思える木を見つけました。(2024年9月8日

2005年のきょうヌルデ> 2004年のきょうワレモコウ

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9月16日(土) サルスベリ

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やや地味系の写真が続いたので、華やぎが欲しくなりました。
夏のイメージが強いサルスベリであっても、まだまだ元気に花を咲かせています。漢字で書けば百日紅、夏の3カ月をまるまるカバーした上に9月まで咲き誇っていてもノープロブレムということなのでしょう。
隣町の寺に、枝の広がりが10mにも及ぶサルスベリがあって、それは見事なものでした。しかし、本堂建て替えのために移植されたら、すっかり花が止まってしまいました。薄紅の天蓋の復活を願うばかり(注1)です。

<補注1> 大サルスベリの移植から15年が経ち、やや持ち直したかには見えるものの、昔日の面影には遠く及びません。(2021年夏)
<補注2> 9月末まで花が持つことを再検証しました。(2021年9月25日

2005年のきょうベニゴウカン(ヒネム)> 2004年のきょうツルボ

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9月15日(金) トキリマメ

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調べの足りないものはここに載せないように、と自戒してはいるというのに、珍しさに負けてつい取り上げてしまうことがあります。
冬、この株についた豆の実を見つけたときがそれで、タンキリかトキリか不確実のまま、実のサイズだけでエイヤッとタンキリにしたのでした。
季節が巡り、両者を判別する決め手の葉を見ることができました。
しっかりと先が尖っていました。やってしまった=大チョンボです。1月の記事タイトルはトキリマメに訂正して、ここで懺悔です。

<補注1> その後、タンキリマメの方ともずいぶん親しくなりました。
<補注2> もう少し全容がわかる写真を再掲しました。(2016年9月17日

2005年のきょうホワイトベルベット> 2004年のきょうタラノキ

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9月14日(木) ガマズミ

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きのうのキツネノマゴでおととしの記事を見返していたら、その前日にはガマズミを取り上げていました。その記事には初めて見つけた喜びがあふれていて、照れてしまいます。そして今年はもっとうれしい発見がありました。
春に咲く花と秋の実の同時撮影、驚異のツーショットです。
と強調するほど珍奇な現象かどうかは不明であっても、考えてみれば植物だってチャンスさえあれば生殖に励むのは当然なのでしょう。この花を狂い咲きなどと呼ぶのは失礼というものです。

2005年のきょうニラ> 2004年のきょうハナゾノツクバネウツギ(アベリア)

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9月13日(水) キツネノマゴ

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キツネノマゴを最初にここに載せてから、もう2年近くになります。そのときの記事を見ていたら、かなりポピュラーなこんな草にも右往左往していた当時のことが懐かしく思い出されました。
で、今回は少しばかり余裕を持った遊びの一枚です。というか、ただ運が良かっただけなのですけれど…。
しかし、日曜の番外編でバッタを取り上げたばかりでこういうシャッターチャンスに恵まれるとは、我ながらなかなかのツキに恵まれたものです。

<補注> 白花種もあります。(2010年11月6日

2005年のきょうウラハグサ(フウチソウ)> 2004年のきょうフジ(ノダフジ)

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9月12日(火) ツユクサ

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きのう、イボクサを収録した流れ(仲間つながり)で、ここで本来のツユクサを載せておきます。じつは昨夏に一度取り上げてはいるものの、あまりに見慣れた草なので、少し遊びが過ぎてしまいました。
じつはよく見ないと気づかないポイントもあるのです。
2枚しかなさそうに見える花びらは、残りの白い1枚が下側に隠れています。さらに、黄色い葯がいかにも雄シベっぽい3本は、見かけ倒しのダミーだというのもヘソ曲がりなことです。集客担当というところでしょうか。

2005年のきょうハギ> 2004年のきょうヒガンバナ

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9月11日(月) イボクサ

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放置された田のなかで、まるで作り物のような花が不似合いに咲いていました。ツユクサの仲間うちでも湿地を好む種類なので、ここはうってつけのようです。
花の形は、ミッキーマウスのようなふつうのツユクサとは大違いで、トキワツユクサムラサキツユクサに近い感じです。
しかし、疣(いぼ)とりに効くと思われたばかりに、こんな変な名前をいただいたそうで、もしも「ウスモモツユクサ」などという名前だったらもっと脚光を浴びたのかな…などと余計なお世話を考えてしまいます。

2005年のきょうダールベルグデージー> 2004年のきょうニラ

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番外編 : バッタ

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ススキの葉を一枚とり、先の20㎝くらいを残して元方向から葉脈の左右を裂きます。裂くのを止めた箇所を左手の指で押さえ、右手で葉脈をループ状に……。
年老いた母親は、会うたびそんな説明を繰り返して息子にバッタ作りを伝授しようとするものの、「親の心、子知らず」とはよく言ったものです。
しかしまあ、たった一枚のススキの葉がバッタに見えてしまうのだから、折り紙の国・日本ならではの遊びです。やはり次回こそは折り方を習ってくるとしますか。

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9月10日(日) ヤハズソウ

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ヤハズは矢筈=弓の弦を受けるV字型の切り込み部分のことです。まるで定規で平行線を引いたような葉脈のV字型こそ、矢筈草の名前の由縁です。
葉の元と先を指でつまんで少し強く引っ張ると、この葉は葉脈に沿ってきれいに矢筈型に裂けます。萩の仲間でも、こんな葉はこれだけでしょう。
また、萩の仲間なのに矢筈萩ではなく矢筈草と呼ぶのも変わっています。ほかの萩は木本か多年草なのに、これは一年草なのです。らしくてらしくない、変な萩です。

<補注> 秋なのに若葉を出す一方で、マメ科らしい形の実をつけていました。(2016年10月25日

2005年のきょうイチイ> 2004年のきょうヤマボウシ

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9月9日(土) カラスウリ

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縁の薄いキカラスウリとは違って、ふつうのカラスウリは近所にプランプランです。今年もウリ坊があちこちで目立ち始めました。
これが朱色に熟すのは待ち遠しくても、それはまた木枯らしを待つことです。あちら立てればこちらが立たず。二兎を追うもの一兎をも得ず…。
なんの話かわからなくなって、ふと暦を見たら、きょうは九のぞろ目でした。八がそろって二輪の日はお笑いでも、九の重なりは重陽の節句、菊酒の日です。

2005年のきょうマメアサガオ> 2004年のきょうマーガレットコスモス

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番外編 : 巨峰サンド

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一粒一粒、皮をていねいに剥くだけでも我慢するのが大変なのに、隠し包丁を入れて種を取り出すときにはお腹がキュルキュルキューと泣いておりました。
こんがりと焼いた厚めのトーストに上質のオリーブオイルをたっぷりと染ませ、そこに件の巨峰をびっしりと敷き込んでいきます。
ああ、幸せ。ケケケと一人笑いが出ます。去年のすいかサンドで満足していたら、川上弘美が「桃サンド」している(注)のを知り、負けじと考えた新メニューです。

<補注> 短編集「ざらざら」に出てきます。なお、久しぶりに新作を作りました。(2017年10月9日

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9月8日(金) キカラスウリ

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キカラスウリとの悲恋物語(?)は去年の11月に記録しています。悲しい関係に好転の兆しはなく、今年もハッピーエンドは望めそうもありません。
小さな実のある雌花をようやく見つけたというのに、ここはお出かけ先の北の町です。この実が黄色にしっかり膨らむころ、またここに来られる当てがありません。
去年の情けない写真は新潟で撮ったというのに、今回は青森です。面白いことにそれらの地ではキカラスウリばかり見かけ、カラスウリにはついぞ出会えませんでした。そういう分布傾向があるのか、不思議です。

2005年のきょうナガボノワレモコウ> 2004年のきょうハナシュクシャ

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9月7日(木) コブナグサ

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花が咲いたとはいうものの、地味な姿です。もっとも、名前の小鮒は葉の形に由来するそうで、もとから花は無視されていたのでしょう。
わりと雑草っぽくて、空き地などで見かけはしても、この草は黄八丈の染料(注)として大事なものと言います。金のなる木ならぬ「金になる草」というところです。
同じイネ科の仲間であるチヂミザサと感じは似ていても、向こうがあくまで地表を這うのに比べ、こちらは茎が枝分かれして脛の高さくらいまで立ち上がります。

<補注1> 大きな群落を見ました。(2018年10月11日
<補注2> このコブナグサで染め上げた色を「刈安」と呼びます。その刈安はススキ属のカリヤスのことと誤解し、永年月、無駄な捜索をしました。(2023年6月23日

2005年のきょうウコン> 2004年のきょうママコノシリヌグイ

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9月6日(水) ギンドロ(ウラジロハコヤナギ)

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白銀(しろがね)色の葉裏がさやさやと揺れ動いて、吹く風を涼しげに思わせます。対するに葉の表は深い緑色であって、この二色のコントラストはかなり遠くからでも鮮やかさが際立ちます。
昔の感覚では、泥は決して汚いものではなかったのでしょう。銀泥とは、まさにこの葉のための名前に思えます。
5裂または3裂する葉の形と大きさはカエデ風でも、葉裏がフェルトのようで肉厚です。ポプラの仲間なので、上向きの枝が主幹から元気にたくさん出ます。

<補注> 雌雄異株であり、枝が上に向かいやすいのは雄株の特色(雌株は横に張る傾向)だと言います。

2005年のきょうリコリス・オーレア> 2004年のきょうイタドリ

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9月5日(火) ナンバンギセル

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古くはこれを「思い草」と呼んでいたそうです。恋しい人を思うあまりにうつむいた風情からの連想でしょうか。
そんな慎ましやかな名前が一気に即物的なものに変わったのは江戸時代に入ってだそうで、煙草の普及もこのころだったことがわかります。思えば、戦国武将がプカプカやっている図は見たことがありません。
通常の草花感覚からは離れてやや異様な風体です.。ススキ(注1)などに寄生して、その根もとにニョロッと顔を出します。写真の1本は、ススキではなくヨシ(アシ)を宿主にしていたので、湿気も嫌いではなさそうです。

<補注1> 図鑑解説どおりにススキの根もとに生えている状態をとらえました。(2013年9月13日
<補注2> これぞ決定版と言えそうな大群落を見ました。(2014年9月8日

2005年のきょうヒメマツバボタン> 2004年のきょうモクレン

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9月4日(月) イトススキ

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ふつうのススキはどうにか花穂をもたげてきた時期なのに、こちらのイトススキは一足早く穂を開きました。
まったくもって名前どおりと言うしかない葉です。ふつうのススキを庭に持ってくるとあまりに野趣が強すぎます。それに比べ、これなら玄関脇などにも似合います。
ススキの園芸種ではタカノハススキをよく見かけます。ただ、このイトススキもタカノハススキと同じく日本で作出(注1)されたと言います。和風の暮らしのなかにはススキが根付いていたことが偲ばれます。

<補注1> 「作出」という表現は不適切かもしれず、イトススキとシマススキはススキの「品種」という位置づけです。(タカノハススキは明らかに園芸種)
<補注2> イトススキが枯れに枯れると、いい味わいになります。(2009年2月15日

2005年のきょうアメリカノウゼンカズラ> 2004年のきょうウモウケイトウ

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9月3日(日) サワギキョウ

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暑い盛りにこの花色ならばもっと歓迎されるはずなのに、サワギキョウの涼しげな花は、残念ながら秋の入り口になって開いてきます。
名前を借りている本当の桔梗は盆花の代表格ですから、半月以上は遅い登場です。桔梗と名乗るものの花の形は大違いで、もっぱら色からの名づけかと思えば、これでも立派なキキョウ科メンバー(属違い)なので、あまりくさすことはできません。
そんな「桔梗」の名に比べると、沢の字はまさしくこの草の性質をよく表しています。湿地を好むので、半日陰の水辺や窪地で見かけます。

<補注1> サワギキョウの名を借りた外来種はこちらです。
<補注2> サワギキョウの花のしくみを観察してみました。(2010年9月11日

2005年のきょうガガイモ> 2004年のきょうナンキンマメ(ラッカセイ)

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9月2日(土) イヌタデ

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イヌタデなどと正式な名前を使うと親近感が落ちてしまいます。たぶんアカマンマ(注)と呼び習わしてきた人が多いと思います。
ままごとの赤飯として、全国で無理無体に引きちぎられてきた過去を思うと、最近の子供が電子遊びに夢中なことはイヌタデには救いかもしれません。
ところで、たまに白いタデを見かけます。しかし、それをふつうのご飯にしたかというと、ままごとでは白米はオオバコの実の役目でした。こんなことを思うと、白いタデはやはり稀な存在だったことがわかって愉快です。

<補注> 正確にはアカノマンマでした。(2019年10月24日

2005年のきょうハス> 2004年のきょうピンクノウゼンカズラ

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9月1日(金) ヘクソカズラ

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スグリの実と間違えてしまいそう、というのは冗談として、ヘクソカズラの実がプックリと膨らんできました。や蕾がまだ残っていて、観察にはなかなか好機です。はちきれそうな子房の先に残る萼片が星の王子様みたいです。
冬にはこれが美しいオレンジ色になって、リース花材にお誂えです。ただ、その輝きに見惚れるには、あと3~4カ月の熟成が必要です。
…と書けば先は長そうでも、きのうの朝など、雲がすっかり秋のそれでした。我が学びの歩みはヨタヨタでも、季節だけはスタスタと速い足取りで進みます。

2005年のきょうセンニンソウ> 2004年のきょうマツムシソウ

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